以下は、行政書士を目指す人向けの応援サイト、らしい。実に懇切丁寧かつ親切で、これで合格しなかったら、……(以下省略)。
知り合いの市職員の方がこのサイトをフェイスブックに上げていらして、楽しそうにお喋りチャットを。
まぁ、誰がこういう訴訟を起こすのか、過去の経緯や社会常識から判断すれば、わざわざ細かい法律を覚えなくても、おのずと通る仕組み。「多様性」「多文化共生」「お互いを認め合う」「私らしく生きる」等と言い出すから、平成時代はメディアも教育界も家庭生活も、混乱に混乱を重ねたのだ、と私は思う。
(https://shosi-gyousei.com/minomensi-tyukonhi-sosyou?fbclid=IwAR2M7UTx33sseJuqMqTsA_shMrtYbWZGJZlfBLBvv-LbuQ14bQoLTJQqh3U)
箕面市忠魂碑訴訟~市有地の無償貸借行為は政教分離原則に反するか?
1.忠魂碑を移転した費用を市がもち、かつ無償で貸借したことは問題ないのか?
2.慰霊碑の前で行われた慰霊祭に市の教育長が出席したことは問題ないのか?
「試験で問われるのはここの部分ですから、結論を覚えることはもちろん、なぜその結論にいたるのかというところを中心に理解していきましょう。」
箕面市忠魂訴訟の概要
・訴えのきっかけ
蓑面市が小学校の増改築のため、戦没者の遺族会所有する忠魂碑を他の市の所有する土地に移転した。
その際移転費用の負担と移転後の市の土地を無償で貸借した。また忠魂碑前で遺族会が開いた慰霊祭に市の教育長が出席した。
この事実が公になるとこれら市の行為は特定の宗教団体を援助・助長する行為で、政教分離原則に違反するのではないかと訴えが起こり争うことになった。
・判旨
・市が行った忠魂碑の移転は、移転後の土地を有効活用することが目的である。
・憲法で定められている宗教団体・宗教上の組織とは、宗教と何らかのかかわりあいのある行為を行っている組織や団体のすべてを意味するものではない
・遺族会は特定の宗教の信仰等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体とはいえない
・市の教育長の慰霊祭への参加も戦没者遺族への社会的儀礼を尽くすという、もっぱら世俗的なものであり特定の宗教を援助するなどの行為とは認められない
・訴訟の結論
・市が忠魂碑も移転費用を負担したり、移転後の市が所有する土地を無償貸借する行為は特定の宗教団体の援助にはあたらず問題ない
・特定の宗教団体ではない遺族会主催の慰霊祭に市の教育長が出席したことも問題ない
押さえておくべきポイントは4つ
1. 忠魂碑の移設は特定の宗教を援助等を促進したり、他の宗教に干渉を加えるものではない
☚ ・そもそもの目的が小学校の建て替えで忠魂碑移設後の跡地を活用することなので宗教的意義は何もない
・市が費用負担したり、移設後の土地を無償で貸借することは問題ない
2. 憲法20条1項・憲法89条にいう宗教団体、宗教上の組織とは、宗教となんらかのかかわりがある行為を行う組織や団体の全てを意味するものではない
☚ たしかに忠魂碑というのは戦没者のために作られるものです。戦没者の慰霊などというと宗教的なにおいがするという見方がでるのも仕方ない面もたしかにあるかもしれません。
憲法でいう宗教的組織というのは宗教的なものすべてを含むものではなく、特定の宗教の信仰等を本来の目的とする団体のことであると最高裁が判示した
遺族会というのは何か宗教を信仰することが主な目的ではなく、ただ亡くなった人を祈念するのが目的
3. 遺族会は宗教団体、宗教上の組織には当たらない
4. 遺族会の主催する慰霊祭に教育長が出席する行為も特定の宗教団体への援助等にはあたらない
☚ 宗教的団体にあたらない遺族会の行った慰霊祭に市の教育長が出席したとしてもなんら問題ない
《出題例》
・市の行った忠魂碑の移転は、戦没者遺族に対する援助・助長であると認められるため、政教分離原則に違反する。
・遺族会は憲法20条1項後段、憲法89条にいう宗教団体、宗教上の組織に該当する。
・市の教育長が慰霊祭に出席した行為は、遺族会という宗教上の組織に対する援助・助長となるため政教分離原則に違反する。
☚ いずれも誤りの肢である
☚ 大事なのはどの部分がどう違うのかというところ
「令和2年の行政書士試験において出題される可能性がありますので、出題されたら確実に正解に導けるようにしておきましょう。」
(部分転載終)
《参考》
日本国憲法 – e-Gov法令検索
第二十条
信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
第八十九条
公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
(転載終)
たまたま、しばらく前に依頼された原稿の準備のために、偶然見ていた『神道事典』のページと内容が合致したので、私(ユーリ)は横やりお節介コメントをした。
(https://www.facebook.com/ikuko.tsunashima)
2022年6月6日投稿
横から失礼します。この事例、神道事典にも年表に掲載されています。キリスト教(プロテスタント)の一部の人や、左傾化した大学教員やジャーナリストが、頭でっかちの理屈だけの解釈を声高に広めるので、若い世代の中には、もしかしたら、文字通りの解釈に影響されて混乱している人がいるかもしれません。本件は、大阪地裁が違憲判決、大阪高裁と最高裁では合憲判決です。
(箕面忠魂碑移転訴訟)
(転載終)
『神道事典』國學院大学日本文化研究所(編)弘文堂(平成6年7月初版第1刷)pp.764-765.
年表より該当箇所を抜粋(by ユーリ)
1977年(昭和52年)10月 箕面忠魂碑移転提訴
1982年(昭和57年)3月24日 箕面忠魂碑移転訴訟、大阪地裁、違憲判決. 市側控訴(宗教時報)
1983年(昭和58年)3月1日 大阪地裁、箕面忠魂碑慰霊祭訴訟に違憲判決. 原告側勝訴.
1987年(昭和62年)7月 大阪高裁で合憲
1993年(平成5年)3月18日 箕面忠魂碑訴訟、最高裁で合憲判決
(以上抜粋終)
冒頭のフェイスブックのチャットで引用されていた方がいらしたので、こちらも復習。
(https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=56361&fbclid=IwAR3_KQzxUZivZ4PnAf4dgUAt64OuN7Jn_sIxXiL66RYSZnLGK_n90P_QiB8)
事件番号: 昭和62(行ツ)148
事件名: 運動場一部廃止決定無効確認等、同附帯及び慰霊祭支出差止
裁判年月日: 平成5年2月16日
法廷名: 最高裁判所第三小法廷
裁判種別: 判決
結果: 棄却
判例集等巻・号・頁: 民集 第47巻3号1687頁
原審裁判所名: 大阪高等裁判所
原審事件番号: 昭和57(行コ)21
原審裁判年月日: 昭和62年7月16日
判示事項:
一 市が忠魂碑の存する公有地の代替地を買い受けて右忠魂碑の移設・再建をした行為及び右忠魂碑を維持管理する地元の戦没者遺族会に対しその敷地として右代替地を無償貸与した行為が憲法二〇条三項により禁止される宗教的活動には当たらないとされた事例
二 財団法人D会及びその支部と憲法二〇条一項後段にいう「宗教団体」及び憲法八九条にいう「宗教上の組織若しくは団体」
三 市の教育長が地元の戦没者遺族会が忠魂碑前で神式又は仏式で挙行した各慰霊祭に参列した行為が憲法上の政教分離原則及び憲法二〇条、八九条に違反しないとされた事例
四 自己の権限に属する財務会計上の行為を吏員に委任した普通地方公共団体の長と地方自治法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」
五 自己の権限に属する財務会計上の行為を吏員に委任した普通地方公共団体の長の損害賠償責任
裁判要旨:
一 市が忠魂碑の存する公有地の代替地を買い受けて右忠魂碑の移設、再建をした行為及び右忠魂碑を維持管理する地元の戦没者遺族会に対しその敷地として右代替地を無償貸与した行為は、右忠魂碑が、元来、戦没者記念碑的性格のものであり、特定の宗教とのかかわりが少なくとも戦後においては希薄であること、右戦没者遺族会が宗教的活動をすることを本来の目的とする団体ではないこと、市が右移設、再建等を行つた目的が、右忠魂碑の存する公有地を学校用地として利用することを主眼とするもので、専ら世俗的なものであることなど判示の事情の下においては、いずれも憲法二〇条三項により禁止される宗教的活動には当たらない。
二 財団法人D会及びその支部は、憲法二〇条一項後段にいう「宗教団体」、憲法八九条にいう「宗教上の組織若しくは団体」に該当しない。
三 市の教育長が地元の戦没者遺族会が忠魂碑前で神式又は仏式で挙行した各慰霊祭に参列した行為は、右忠魂碑が、元来、戦没者記念碑的性格のものであること、右戦没者遺族会が宗教的活動をすることを本来の目的とする団体ではないこと、右参列の目的が戦没者遺族に対する社会的儀礼を尽くすという専ら世俗的なものであることなど判示の事情の下においては、憲法上の政教分離原則及び憲法二〇条、八九条に違反しない。
四 普通地方公共団体の長は、その権限に属する財務会計上の行為をあらかじめ特定の吏員に委任している場合であつても、右委任により処理された財務会計上の行為の適否が問題とされている代位請求住民訴訟において、地方自治法二四二条の二第一項四号にいう「当該職員」に該当する。
五 普通地方公共団体の長の権限に属する財務会計上の行為を、委任を受けた吏員が処理した場合は、長は、右吏員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し、故意又は過失により右吏員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかつたときに限り、普通地方公共団体が被つた損害につき賠償責任を負う。
(一、三につき補足意見がある。)
参照法条:憲法20条,憲法89条,地方自治法153条1項,地方自治法242条の2第1項4号
(転載終。太字はユーリによる)
冒頭の親切な資格試験応援サイトには、興味深い以下の事例もあった。まずは、ツィッターとフェイスブックで紹介を。
(https://twitter.com/ituna4011/status/1533956437034278912)
Lily2@ituna4011
自衛隊員合祀訴訟~自己の信仰に反して夫が合祀されたのが許せない
https://shosi-gyousei.com/zieitai-gousi-sosyou…
⇦ 私の学部生時代、一般教養の日本史の講義で出てきた事例。先生は、日本政府の在り方に批判的な説明をされていた記憶があり、若い頭は混乱した。 責任はどこに?
8:38 AM · Jun 7, 2022
(転載終)
(https://www.facebook.com/ikuko.tsunashima)
2022年6月7日投稿
私の学部生時代、一般教養の日本史の講義で、この話題が取り上げられていた。
先生は、日本政府の在り方に批判的な説明をされていて、若い頭は混乱した。
以下の解説は単純明快で、いわば常識的。
今の若い人達は、おかしな議論に迷妄しないで、有意義な時間を過ごしてくださいね。
(転載終)
続いて、想定問題と対策を以下に。
(https://shosi-gyousei.com/zieitai-gousi-sosyou)
「自衛隊員合祀訴訟~自己の信仰に反して夫が合祀されたのが許せない」
2022.05.04
・夫を勝手に合祀した自衛隊の行為は宗教活動にあたるのか?
・自身の信仰に反して祀られることのない自由(宗教的人格権)は認められるのか?
「行政書士試験においては信教の自由の分野は狙われやすいところなのでこの判例もしっかり押さえておきましょう。」
《自衛隊員合祀訴訟について》
・きっかけ
ある自衛隊員が殉職してしまった。彼の所属していた自衛隊地方連絡部は殉職した隊員を護国神社に合祀することを推進した。
しかし殉職した隊員の妻が、夫を護国神社に合祀する行為は自己の信仰に反するため反発した。妻は自衛隊地方連絡部の行為は政教分離原則に反し、また夫を自己の信仰に反して祀られることのない自由を侵害されたと主張し争われることになった。
・判旨
本件の殉職隊員を合祀する行為は宗教とのかかわり合いは間接的で、その目的も隊員の社会的地位の向上と士気の高揚を図ることであった
国or機関として特定の宗教への援助等を行うものであると一般人から評価される行為とは認めがたい
私人間で争いがある場合、場合によっては民法や不法行為等の規定の運用によって法的保護を図るべきである
人が他者の宗教上の行為によって不快な状態になりたくないと望むことは、その心情として当然である
しかしその行為に対して直ちに損害賠償など法的救済を求めることができるとすると、かえって相手方の信教の自由を妨げる結果となってしまう
・結論
自衛隊が亡くなった夫を護国神社に合祀した行為は宗教活動にはあたらない
妻の静謐な宗教的環境下で信仰生活を送るべき利益なるものは認められない
殉職隊員を祀る行為は特定の宗教を助長するなどの目的ではなく、隊員の士気の高揚などが目的である
私人間の争いは間接適用説により、民法の規定で法的保護を図るべきである
宗教上の感情に直ちに法的救済を認めると、相手方の信教の自由も妨げる結果となる
・たしかに護国神社というのは、なんとなく宗教的な匂いがしなくもない。
・しかし目的が宗教を援助するような意味はない
・最高裁も問題ないとの判断
・憲法の私人間効力という知識が必要
1.無適用説:憲法の人権規定は私人間への適用はない
2.直接適用説:憲法の人権規定は私人間にも直接適用される
3.間接適用説:憲法の人権規定は私人間には直接適用されないが、民法等を媒介して憲法の人権規定を適用する
☚最高裁はこの内の3番の間接適用説を採用
私人間間で信教の自由の侵害の程度が許容範囲を越えた場合は、憲法20条によって違法である、とはならず民法1条や90条によって違法となる
「要はバランスですよね。一方の言い分ばかり聞いては不公平だという司法の考えそのものです。つまるところ、妻の訴えた、静謐な宗教的環境下で信仰生活を送るべき利益なるものは認められないという結論に至ったわけですね。」
(部分引用終)
《参考》
(https://ja.wikibooks.org/wiki/民法第1条)
(基本原則)
第1条
1. 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。
2. 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。
3. 権利の濫用は、これを許さない。
(転載終)
(https://ja.wikibooks.org/wiki/民法第90条)
(公序良俗)
第90条
平成16年改正
現代語化に伴う改正。改正前文言は以下のとおり。
「公ノ秩序又ハ善良ノ風俗ニ反スル事項ヲ目的トスル法律行為ハ無効トス。」
2017年改正
改正前文言は以下のとおり。
「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」
現行
「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」
(転載終)
似たような訴訟事案が『神道事典』國學院大学日本文化研究所(編)弘文堂(平成6年7月初版第1刷)pp.764-767.の年表に列挙されていたので、ここに部分抜粋を。
(1)
1971年(昭和46年)5月4日 名古屋高裁、津市の市立体育館の公費による神式の地鎮祭に違憲判決.
1977年(昭和52年)7月13日 津地鎮祭訴訟、最高裁合憲判決.
(2)
1973年(昭和48年)1月 山口殉職自衛官合祀提訴
1979年(昭和54年)3月 山口地裁で違憲判決
1982年(昭和57年)7月 広島高裁で違憲判決
1988年(昭和63年)6月1日 最高裁で合憲判決
(3)
1982年(昭和57年)6月 愛媛県玉串料提訴
1989年(平成元年) 松山地裁で違憲判決
1992年(平成4年)5月12日 高松高裁で合憲判決
(部分抜粋引用終)
この一覧表を改めて眺めてみると、最終的には国是や国民感情の大多数に照らし合わせて、常識的な判断が下される、とわかる。
たとえ地裁や高裁レベルでは「違憲」判決が出ても、一段上の裁判所や最高裁まで行けば「合憲」判決が下される仕組みになっている。つまり、自由な民主主義社会において世論が分かれそうな懸案に関しては、とりあえず、地裁レベルで「違憲」だとして提訴した民間人の立場を「尊重」しておき、公の立場にある側が控訴した末、最終的には上位あるいは最高レベルの裁判所で国体が守られるようにするのだ。
但し、もしも控訴を断念した場合には、中途半端になってしまう恐れがある。
こういう話は、大学の一般教養の日本史や憲法学で聴くようなトピックだが、なぜ行政書士の試験で今でも問われるのだろうか?
そもそも、行政書士とは?
(gyosei-shiken.or.jp/doc/abstract/abstract.htm)
《行政書士は、行政書士法第1条の2、第1条の3の規定に基づき、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類、その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする》
(引用終)
「一般財団法人 行政書士試験研究センター」(gyosei-shiken.or.jp)のサイトには、興味深い事柄が掲載されていた。
(gyosei-shiken.or.jp)
《令和3年11月14日に実施した令和3年度行政書士試験では、幅広い年齢層の方がチャレンジし合格しました。行政書士試験は、年齢、学歴、国籍等に関係なく、どなたでも受験できます。
申込者:最年長 97歳(1名) 最年少 11歳(2名)
合格者:最年長 82歳(1名) 最年少 14歳(2名)》
(部分転載終)
十代で行政書士に合格って、どういう進路を??申し込んだ97歳のチャレンジ精神は凄いが、合格者については82歳が最高齢のようだった。
行政書士試験がそんなに人気があるなんて、知らなかった。法律だけの知識ではない、と思いますが。